薬剤師向け

自家製剤加算(粉砕・半錠など)を算定するときの注意点まとめ 2022年4月改定対応

自家製剤加算を算定できるのかどうか判断するのに注意点などをまとめてみました。

そもそも自家製剤加算とは

【ポイント】(調剤報酬点数表に関する事項を参考にしています。)
市販の剤形で対応できない場合に特殊な技術工夫を行った場合に算定できる加算(粉砕・半錠など)
予製剤・錠剤の分割の場合は点数が100分の20になる。
③自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載する。
④医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行う。
⑤調剤後の医薬品に「同一剤形」「同一規格」が存在する場合は算定できない。
⑥「計量混合調剤加算」「一包化加算」「嚥下困難加算」とは同一の「剤」であれば片方しか算定できない

①市販の剤形で対応できないとは何か?例を挙げてみます。

半錠にしないといけない場合→詳細は「半錠にする場合」をチェック
・(12)イの(イ):錠剤を粉砕して散剤とすること。→詳細は「粉砕する場合」をチェック
・(12)イの(ロ):主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること。
・(12)イの(ハ):主薬に基剤を加えて坐剤とすること。
・細粒とシロップの混合
※いずれも配合変化や特性に問題ない場合に限ります。

予製剤の場合は点数が100分の20になるので注意しましょう。

・(12)のキ:「予製剤」とは、あらかじめ想定される調剤のために、複数回分を製剤し、処方箋受付時に当該製剤を投与することをいう。
※令和4年の改定で錠剤の分割も100分の20になりました。(自家製剤加算の見直し)

③自家製剤を行う場合は調剤録に記載が必要です。

・(12)のケ:自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載すること。

④配合変化や液性、均一に混合されるかなど判断する必要があります。

・(12)のコ:自家製剤は、医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行うこと。

⑤「同一剤形」「同一規格」のものがある場合は算定ができません。

(12)のエ:薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品と異なる剤形の医薬品を自家製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き自家製剤加算を算定できる。
(イ) 調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されて
いる場合
(ロ) 液剤を調剤する場合であって、薬事法上の承認事項において用時溶解して使用す
ることとされている医薬品を交付時に溶解した場合

疑義解釈では

問 14 自家製剤加算における「同一剤形」の範囲は、どのように考えたらよい
か。

(答)内服薬の下記の剤形については、それぞれ別剤形として取り扱うこと。そ
の他については、内服薬及び外用薬における「同一剤形」の取扱いと同様で
ある。なお、本取扱いは、内服薬に係る自家製剤加算における考え方であり、
例えば、調剤時の後発医薬品への変更に関する剤形の範囲の取扱いとは異
なることに留意すること。
○内用薬
① 錠剤、口腔内崩壊錠、分散錠、粒状錠、カプセル剤、丸剤
② 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤 

とされています。

例えば
A錠200mgが存在し、A錠100mgは存在せずAカプセル100mgは存在する場合は
A錠200mg0.5錠は同一剤形としてAカプセル100mgがあるので算定できないです。

⑥同一の「剤」だと「計量混合加算」「一包化加算」「嚥下困難者用製剤加算」と同時算定はできないです。

・(12)のカ:自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は算定できない。
・例えば
Rp1
アーチスト錠12.5mg 0.5錠 分1朝食後28日分
Rp2
ビオフェルミン配合散 1g
ジアスターゼ「ケンエー」1g 分1朝食後5日分
のような場合は服用時点が同一なので同一の「剤」になります。
従ってRp1の自家製剤加算Rp2の計量混合調剤加算のどちから一方しか算定できません。
「剤」が違えばそれぞれで別に取ることは可能です。

併算定できるかはこちらを参考にしてください。

粉砕する場合

注意点
①粉砕する理由が「粉砕しないと服用できない」で粉砕している場合は、「嚥下困難者用製剤加算」に該当するので違いを理解しておく。
②粉砕後の安定性を確認する必要がある。
③散剤で対応できるものは算定できない。

 ①粉砕理由を理解する

嚥下困難者用製剤加算」は処方箋受付1回につき1回だけ算定できる加算です。
・(1)キ①:嚥下困難者用製剤加算は、嚥下障害等があって、市販されている剤形では薬剤の服用が困難な患者に対し、医師の了解を得た上で錠剤を砕く等剤形を加工した後調剤を行うことを評価するものである。

粉砕指示の理由がこちらに当てはまる場合は「嚥下困難者用製剤加算」を算定して「自家製剤加算」は併算定できません
・(1)キ④:1剤として取り扱われる薬剤について、自家製剤加算は併算定できず、また、剤形を加工したものを用いて他の薬剤と計量混合した場合には、計量混合調剤加算を併算定することはできない

②粉砕後の安定性を確認する

・「医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行う」ので粉砕後の安定性や動態を先にチェックしましょう。

・徐放性製剤:ニフェジピンCR錠、テオドール錠、オキシコンチン、デパケンR錠など
・腸溶性製剤:バイアスピリン錠、パリエット錠、ラベプラゾール錠など
・吸湿性:アスパラカリウム錠、スローケー錠など
・配合錠:粉砕後均等にならない恐れがある。

粉砕ハンドブック、インタビューフォームなどで粉砕後の安定性を調べましょう。

③散剤で対応できるものは算定できない

例えばガスター錠の粉砕ではファモチジン散が存在するので、これで対応が可能なため算定はできないです。

粉砕指示が来た時に粉砕後の安定性が担保できないのであれば同効薬の散剤がないかもチェックしておくといいでしょう。

半錠にする場合

注意点
①割線の有無と規格を確認する。

②割線の有無の記載は算定に影響しなくなった。(2022年4月変更点)

①割線と規格の確認

添付文書に割線の記載があるかを確認します。

例1:カロナール500の0.5錠は算定可


カロナールは500には割線の記載があり半分にした250mgの規格もないため半錠による自家製剤加算を算定が可能です。

例2:カロナール200の1.5錠は算定不可

カロナール200mgには割線がありますが1.5錠だと300mgの規格が存在するため算定は不可能です。
カロナール200mgの0.5錠の場合は100mgの規格がないため算定が可能になります。

例3:アマリール3mgの0.5錠は算定可

アマリール3mgの0.5錠は1.5mgになるのでアマリール1mgとアマリール0.5mgで対応できそうですがこの場合は算定が可能です。

②割線の有無は算定に影響しなくなった

厚生労働省の疑義解釈によると

問 13 自家製剤加算について、錠剤を分割する場合は、割線の有無にかかわ
らず、所定点数の100分の20に相当する点数を算定するのか。

(答)そのとおり。

と明記されていますので割線模様でも半錠でしっかり分割できていれば算定が可能です。

※おまけ:2022年改定前は割線模様の場合は△だった

カロナール錠200mg
(割線の記載が添付文書に乗っています)
フルイトラン錠1mg
(割線の記載が添付文書にありません)

フルイトランのインタビューフォームをみてみると


このようにフルイトランは割線ではなく割線様形状があります。

改定前は明確に割線と明記のないものは基本的に算定ができませんでした。
過去の厚生労働省の疑義解釈では「フルイトランなど客観的に均一にできる根拠があれば算定可能」とされていますが、割線でなければ半分にした時の均一性が担保されていない可能性もあるため地域によってとらえ方が変わってくるのではないでしょうか。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201001/513911.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/19/3/19_111/_pdf