薬剤師向け

ノルバスク[アムロジピン]の薬剤師のおさえておくポイント

アムロジピンの適応毎の位置付け

高血圧症

降圧の目的

降圧治療の最終目的は脳心血管病の発症抑制です。

積極的適応がない高血圧の第一選択薬の一つ

積極的適応がない高血圧患者の第一選択薬は①「Ca拮抗薬」、②「ARB or ACE阻害薬」③「少量の利尿薬」です。

STEP1で①、②、③の単剤
STEP2で①+②、①+③、②+③ (配合錠もOK)
STEP3で①+②+③
STEP4で①+②+③+MR拮抗薬、βもしくはα遮断薬さらに他の種類の降圧薬

アムロジピンはSTEP1から使用可能で2.5〜10mgと用量調節も容易なこと、血中半減期および作用持続時間が長く、また効果発現が緩徐であるため反射性交感神経活性化やRA系の活性化を生じにくいことが特徴です。

参照:高血圧治療ガイドライン2019

降圧の程度

添付文書より国内第3相試験データ
条件:アムロジピンとして5mgを1日1回8週間投与後に、収縮期血圧が140mmHg以上を示す患者305例を二群に分けて、アムロジピンとして10mg又は5mgを1日1回8週間投与

結果:収縮期血圧のベースラインからの変化量の平均値は、10mg群で13.7mmHgの低下、5mg群で7.0mmHgの低下

継続試験として
条件:アムロジピンとして10mgを1日1回通算して52週間投与

結果:収縮期血圧のベースラインからの変化量の平均値は、15.6mmHgの低下

小児高血圧の適応をもつ唯一のCa拮抗薬

・小児高血圧での適応を持っている降圧薬でCa拮抗薬では唯一です。6歳以上に2.5mgを分1で使用します。

アムロジピン分2の処方意図は?

アムロジピンは分1での用法設定がされていますが、外来では分2での処方がくる場合があります。

処方意図として血圧の日内変動を見て早朝の血圧を下げたいと考え分2に分けているケースが多いようです。
通常の用法から外れる使い方にはなるので処方目的を確認することと分2にすることでアドヒアランスが悪化しないかを薬剤師として確認していくことが大切でしょう。

高血圧ガイドライン2019では「降圧薬は1日1回投与を原則とするが、24時間にわたって降圧することが重要である。1日2回の投与が好ましいこともある。」とあるように1日を通しての降圧の重要性の記載があります。

参照:DI Online「Ca拮抗薬」

狭心症:冠攣縮発作の予防に使われる

冠攣縮性狭心症治療の第一選択薬としてCa拮抗薬が位置付けられています。
通常量では副作用の発現も少なく安全に使用できる薬剤です。
Rhoキナーゼ抑制効果も持っていることで冠攣縮の抑制に働きます。

参照:冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013)

妊婦・授乳婦への影響

妊娠の影響

「アムロジピンベシル酸塩」は「他の医薬品では治療効果が不十分な高血圧」に対して妊娠中であってもインフォームドコンセントを受けた上で使用する代表的な医薬品です。

ヒトでのデータは限られているものの、アムロジピンはヒトにおいて胎児への有害作用は証明されていない。
アムロジピンについては少数例ながら妊娠初期の使用で形態異常の頻度の上昇を示さなかったという報告があります。

※これまでは「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。〔動物実験で妊娠末期に投与すると妊娠期間及び分娩時間が延長することが認められている。」と禁忌になっていましたが、令和4年12月5日に添付文書の改訂により禁忌から削除され有益性投与となりました。
参照:「使用上の注意」の改訂について

 【説明のポイント】
・授乳婦が使用している医薬品が児に大きな影響を及ぼすことは少ないと説明する。
・児への影響とともに,医薬品の有益性・必要性および母乳栄養の有益性についても 説明し,母乳哺育を行うか否かの授乳婦自身の決定を尊重し支援する。
・不安が残るようであれば「妊娠と薬情報センター」の窓口でも相談できることをお知らせする。

参照:産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

授乳の影響

血漿蛋白結合率:97.1%→母乳移行しにくい
分子量:567.05→母乳移行が可能な医薬品

RID:中央値4.18%→10%未満なので授乳問題なし

Drugs and Lactation Database (LactMed®):アムロジピンが必要な患者で母乳を止める必要はない。

参照:ノルバスク錠インタビューフォーム

一包化・粉砕等アドヒアランス情報

一包化

無包装状態での安定性は先発・後発・普通錠かOD錠かで少しずつ違っていますが、基本的にPTPから開封後は光と湿気を避けて長期で放置しないことが大切です。

期限の管理と在庫管理を徹底しましょう。

参照:ノルバスクIF

粉砕・半錠

普通錠は苦味の軽減や遮光目的でフィルムコーティングされており粉砕や分割は推奨されません。

OD錠が存在するので嚥下が難しい場合や半錠する場合は普通錠よりもOD錠を選択するのがいいでしょう。

ただしOD錠でも粉砕後の安定性試験で光による類縁物質の増加が見られるため遮光保存と長期での処方はしないほうが良さそうです。

参照:日本ケミファ「アムロジピンのよくある質問集」

簡易懸濁

簡易懸濁する場合もOD錠が存在するので問題なくできます。

注意する副作用

浮腫

機序・時期

Ca拮抗薬の浮腫は血管拡張作用が原因のためアムロジピンなどジヒドロピリジン系で多く見られます。

機序としては血管拡張作用が細静脈よりも細動脈の方が強いために毛細血管の圧が上昇して血管透過性亢進により浮腫が起きると考えられます。

発症時期は投与開始後から徐々に見られます。一般的に6ヶ月以内に多く見られると言われますが長期服用している場合でも見られる副作用です。

浮腫の頻度

添付文書より国内第3相試験データ
条件:アムロジピンとして5mgを1日1回8週間投与後に、収縮期血圧が140mmHg以上を示す患者305例を二群に分けて、アムロジピンとして10mg又は5mgを1日1回8週間投与

結果:浮腫の副作用は5mg群で0.6%、10mg群で3.3%

継続試験として
条件:アムロジピンとして10mgを1日1回通算して52週間投与

結果:浮腫の副作用は10.4%

薬剤性の検討

浮腫はホルモンなど生理的要因や心不全、腎機能低下など様々な要因で起きるため薬剤性かどうかは他の要因を除外していく必要があります。

薬剤師としては
「発生時期」→服用開始してからの時期がどうか
「発生部位」→両側性の下腿浮腫が多いとされる
「併用薬」→漢方による偽アルドステロン症やNSAIDsの服用はどうか
「直近の検査値」→腎疾患や肝硬変、心疾患の可能性はどうか
「最近の生活スタイルの変化」→生活スタイルの変化が原因の可能性はないか

このような情報を踏まえて受診勧奨や医師への情報提供をするのがいいのではないでしょうか。加えて過度な不安でアドヒアランスを下げることにならないように患者への説明も必要です。

代替薬としてはN型Caチャネルも抑制するシルニジピン(N型は再静脈も拡張作用が強いと言われるため)やACE阻害薬、ARBなどがあります。

参照:DI Online「DIクイズ5:(A)下腿浮腫により降圧薬が変更になった患者」
参考文献①

歯肉肥厚

機序はまだわかっていない副作用ですがCa拮抗薬で特徴的な副作用です。

薬剤師としてはプラークコントロール、歯科受診状況をチェックして定期的に歯肉肥厚の副作用モニタリングを行うことが重要です。

参照:DI Online「歯科医に指摘されるまで歯肉肥厚を見逃されていた患者」

体内動態・肝機能・腎機能の影響

代謝

代謝酵素:CYP3A4

肝機能

添付文書より「成人肝硬変患者(Child分類A、B)5例にアムロジピンとして2.5mgを単回投与した場合、健康成人に比し、投与72時間後の血中濃度が有意に上昇し、T1/2、AUCはやや高値を示したが有意差は認められなかった。」

アムロジピンは主に肝代謝の薬剤なので高用量(10mg)において副作用の発現率が高まるおそれがあリます。

肝機能低下がある場合には副作用が出ていないか特に注意が必要です。

腎機能

アムロジピン2.5mg又は5mgの単回投与をしたところ24時間後までに投与量の約3%、144時間までに約8%なので腎機能による血中濃度上昇の影響は大きくないと考えられます。

ただし降圧に伴い腎機能が低下することがあるためアムロジピン服用中の腎機能の悪化には注意が必要です。

相互作用

CYP3A4はイメージがしやすいですが機序不明のもので「シンバスタチン」と併用することでシンバスタチンのAUCが上昇する可能性があります。

スタチンを併用する場合はアムロジピンとの配合錠が存在する「アマルエット」も選択肢に入ってきそうです。

作用機序

血管細胞膜の膜電位依存性Caチャネルに特異的に結合してCa流入を減少させることで血管拡張作用を示します。

L型、N型、T型ある膜電位依存性Caチャネルの中でも特にL型に作用します。

参考文献

①原田拓(2019).副作用を診るロジック じほう