薬剤師向け

薬に影響を与える食品・飲料

相互作用は気にするほとんどの医薬品にありますが、食品や飲料などとの相互作用については正しい理解がないと相互作用による健康への影響が出る可能性があります。

お問い合わせでもある食品との相互作用をまとめてみました。

グレープフルールジュース

薬学教育を学んでいれば常識的なGFJは、含有するフラノクマリン誘導体が小腸のCYP3A4に共有結合することで不可逆的に阻害してCYP3A4の基質となる薬剤の血中濃度の上昇を引き起こします。

グレープフルーツ以外にもスウィーティー、メロゴールド、バンペイユ、レッドポメロ、ダイダイ、ブンタン、ハッサク、サワーポメロ、メキシカンライム、甘夏ミカン、パール柑、サンポウカンなどの柑橘類があります。12月から3月にかけてスーパーで出回ることが多いので冬には特に注意喚起が必要でしょう。

温州ミカンやデコポンなどは含有量が少ないので摂取しても問題ないです。

果肉が白いタイプよりもピンクグレープフルーツの方がフラノクマリン類の含有量が少なく、果肉より果皮に多く含まれているようです。

参考文献
Saita T et al. Screening of furanocoumarin derivatives in foods and crude drugs by enzyme-linked immunosorbent assay. Jpn. J. Pharm. Health Care Sci. 2006; 32:693-699. 「酵素免疫測定法による食品および生薬中のフラノクマリン誘導体のスクリーニング」

セイヨウオトギリソウ

こちらも有名な相互作用です。セイヨウオトギリソウ含有のSJWは「気持ちがすっきりしない」「落ち込みやすい」などの状態に用いられる健康食品です。元気の出るサプリメントなどともいわれます。うつに対しての効果を書いてあるものもありますがエビデンスは不十分です。

CYPを誘導して代謝が強まり薬効の減弱が起きます。

セイヨウオトギリソウ含有の商品名では「セントジョーンズワート」が有名ですが「ハーブブレンド茶」「GABA」といった商品名でもセイヨウオトギリソウを含んでいるものがあるようです。

単に「セントジョーンズワート」という健康食品は避けるよう説明するのではなく、「ハーブを含んだ健康茶や気持ちを落ち着けるサプリメントなどにもセイヨウオトギリソウが含まれている場合があるのでそういうものを使ってみたい場合は表記を確認するか、飲み合わせについてご連絡ください」と伝えるのがいいのではないでしょうか。

納豆・青汁・クロレラ等

VK含有量の多い食品です。

ワーファリンとの相互作用が有名です。食品以外でもラコール・エンシュア・エレンタール・アミノレバンなど栄養剤にも含有している製品があるので量の確認は必要でしょう。

納豆→少量でも避ける。
青汁→少量でも避ける。
クロレラ→少量でも避ける。
ほうれんそう等のVK含量の多い緑黄色野菜→大量に摂取は避ける。小鉢1杯/日程度
野菜ジュース→VK含量記載ないものは避ける。1日のビタミンKの摂取量が250μgであれば影響がないとする報告があるが個人差があるので注意。
健康食品→新たな摂取は避ける。どうしても必要な場合は医師と相談してから。

参考
エーザイメディカル「ワーファリン飲食物・健康食品との相互作用について」
https://medical.eisai.jp/products/warfarin/faq/

アルコール

睡眠薬(BZ系など):アルコールがGABAA受容体に作用すること等により中枢神経抑制作用を示すため、併用で抑制作用が増強→眠気やふらつきの作用増強。

抗不安薬:中枢神経抑制作用の増強→眠気やふらつきの作用増強。

抗アレルギー薬:中枢神経抑制作用の増強→眠気やふらつきの作用増強。

アセトアミノフェン:アルコール摂取でCYP2E1の誘導→肝毒性のあるN-アセチル-p-ベンゾキノイミン(NAPQI)への代謝が促進される。(アセトアミノフェンの代謝経路は参考のカロナール坐剤IFの「代謝」の項目で確認しましょう。)

メトロニダゾール(ボノピオンパックなど):アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害するためアルデヒド濃度の上昇を引き起こす。→腹部の疝痛、嘔吐、潮紅が起こることがある。

ニトログリセリン:血圧低下作用を相加的に増強する。

メチルチオテトラゾール基を有するセフェム系抗菌薬(注射):ジスルフィラム様作用を示す。(投与中、投与終了後1週間は飲酒を避ける)

ワーファリン:アルコールの慢性的摂取により代謝酵素を誘導するためワーファリンの作用を減弱させる。アルコールによる肝機能の低下がワーファリンの作用を増強する。
アルコール摂取から6~7時間以上あけて服用する。晩酌程度であれば毎日でも可能。

メトホルミン:乳酸の代謝が低下し乳酸アシドーシスのリスクが高まる。過度のアルコール摂取が併用禁忌。

薬を飲む必要がある状態でアルコールを飲んでいいことはないですね。しっかり治してから飲みましょう。

アルコールの適正量

厚生労働省は「健康日本21(第一次)」の中で「節度ある適度な飲酒」を「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。」と定義しています。

↓主な酒類の換算の目安↓

アルコールの種類 含有純アルコール量
ビール瓶中1本(500ml) 20g
清酒1合(180ml) 22g
ウイスキー・ブランデーダブル(60ml) 20g
焼酎(35度)1合(180ml) 50g
ワイン1杯(120ml) 12g

 

参考
・各薬剤添付文書
・エーザイメディカル「ワーファリン飲食物・健康食品との相互作用について」
https://medical.eisai.jp/products/warfarin/faq/
・カロナール坐剤 インタビューフォーム
http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=1141700J2050
・厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
・厚生労働省 アルコール
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html

牛乳

ニューキノロン系、テトラサイクリン系抗菌薬:牛乳のCaイオンとキレートを形成して吸収が低下する。併用する場合は薬剤服用後2時間以上開けるて牛乳を飲む必要がある。

酸化マグネシウム(マグミット):代謝性アルカローシスの持続でカルシウムの尿細管の再吸収が増加するので、大量の牛乳で高カルシウム血症、ミルクアルカリ症候群お引き起こす恐れがあります。
大量の牛乳は具体的な量の報告はないですが、一般的に1回500ml、1日1L以上だと大量と言えるようです。

活性型VD3製剤(エディロール等):高カルシウム血症のリスク上昇。

参考
・福岡県薬剤師会 質疑応答
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=39400&dbMode=article

カフェイン

心疾患診断補助薬のアデノシン(注射薬):カフェインがアデノシン受容体に拮抗するためアデノシン作用が減弱するため禁忌。12時間以上の間隔をあける。

ジピリダモール、アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物:カフェインがアデノシン作用を阻害するため効果減弱の可能性あり。

CYP1A2で代謝される薬剤(テオフィリン、チザニジン等):カフェインはCYP1A2で代謝されるため拮抗が起きて薬剤の血中濃度上昇の可能性がある。

参考
・日経DI カフェインが関与する相互作用
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/digital/201603/546034.html

チーズ、ワイン

セレギリン:チラミン(4-ヒドロキシフェニルエチルアミン)の代謝酵素MAOを阻害するためチラミン中毒(顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇など)を引き起こす可能性がある。

イソニアジド:チラミン(4-ヒドロキシフェニルエチルアミン)の代謝酵素MAOを阻害するためチラミン中毒(顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇など)を引き起こす可能性がある。

参考
各添付文書

マグロ、ブリ

イソニアジド:ヒスタミン代謝酵素阻害作用によってマグロなどヒスチジンを多く含有する食品との併用でヒスタミン中毒(頭痛、紅斑、嘔吐、掻痒等)を引き起こす可能性がある。

参考
各添付文書

最後に

これ以外にも食事の影響で用法が特殊な薬剤なども復習したいですね。

調べてみて「~を含有する食品」となると範囲が広く、何をどれだけ食べると相互作用による治療に影響を及ぼしたり副作用につながるのかが難しいと思いました。

極端な偏食や習慣になっている食品、少しでも影響を及ぼす食品は確認した方が良いでしょう。

普段の投薬で食生活を把握しておくことは薬を服用するタイミングの妥当性や食事との影響、食生活の改善という点でも重要度の高いことですよね。