薬剤師向け

重篤な肝機能障害ってどれくらい? 肝機能の評価はどうする?

くま先生
くま先生
添付文書の禁忌に「重篤な肝機能障害」に禁忌とか減量基準になっていたりしますよね。肝機能はどのようにチェックしているでしょうか?どのように評価しているでしょうか?
くま先生
くま先生
AST・ALTの数値がどれくらいの数値でどの程度の肝機能障害といえるでしょうか?復習しておきましょう!

肝障害の重症度:Child-Pugh分類

Child-Pugh分類で添付文書の用量設定が行われている薬剤があります。

例:ベタニス錠

ベタニス錠はChild-Pugh分類で用法が決められています。

・中等度の肝機能障害患者(Child-Pughスコア 7 ~9 )への投与は1日1回25mgから開始する。
・重度の肝機能障害のある患者(Child-Pughスコア10以上)には禁忌。

学生くん
学生くん
Child-Pugh分類ってどんなのでしたっけ?
1点 2点 3点
肝性脳症 ない 軽度 ときどき昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dl) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dl) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満

これら5項目のスコアを足して点数によってA~Cに分類されます。

A:5~6点(軽度)
B:7~9点(中等度)
C:10~15点(重度)

病院では可能ですが、これらの項目を調剤薬局などでチェックするのは難しい方も多いんじゃないでしょうか。

CTCAEから検査値で重症度を判断する

くま先生
くま先生
Child-Pugh分類よりももう少し検査値だけでチェックしやすい重症度の見方がありますよ!

Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE):有害事象共通用語基準

これをもとに有害事象(今回は肝機能障害)の基準を評価することができます!

「CTCAEのグレード」より抜粋
Grade 1
軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない
Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*
Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない;入院または入院期間の延長
を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**
Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する
Grade 5 AE による死亡

検査項目 Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
AST「基準上限38の場合」 38~114
(1.5~3.0B)
114~190
(3.0~5.0B)
190~760
(5.0~20B)
760~
(20B~)
ALT「基準値上限43の場合」 43~126
(1.5~3.0B)
126~215
(3.0~5.0B)
215~860
(5.0~20B)
860~
(20B~)
総ビリルビン「基準値上限1.2の場合」 1.2~1.8
(1.0~1.5B)
1.8~3.6
(1.5~3.0B)
3.6~12
(3.0~10B)
12~
(10B~)
血小板「基準値下限13万の場合」 13万~7.5万 7.5万~5万 5万~2.5万 ~2.5万

※AST、ALT、総ビリルビンの()内はベースライン(B)が基準値を超えている場合の患者さんです。()のついていない数値はベースラインが基準値におさまっている患者さんです。

基準値上限の何倍から何倍かで決まっているので基準値の上限の数字を変えれば設定したい基準値でGradeがわかります。(男女で基準値設定が異なるものもあるのでより正確に見たい場合は電卓をたたいてください。)

薬物性肝障害を起こす薬剤

くま先生
くま先生
最新の情報をチェックしましょう。PMDAの薬剤性肝障害のページはわかりやすいです。

このページを参考に抜粋しました。

解熱消炎鎮痛薬

・アスピリン
・アセトアミノフェン
・ジクロフェナクナトリウム:女性に多い
・スリンダク:女性に多い
・ロキソプロフェンナトリウム:投与直後~2カ月に多い

精神・神経用薬

・カルバマゼピン
・ダントロレンナトリウム
・バルプロ酸ナトリウム
・フェニトイン
・ペモリン

循環器用薬

・塩酸アプリンジン
・アミオダロン
・ニフェジピン
・塩酸ジルチアゼム
・塩酸ベラパミル
・塩酸ヒドララジン
・塩酸チクロピジン
・メチルドパ
・塩酸ラベタロール

消化器用薬

・チオプロニン
・ファモチジン
・ランソプラゾール
・シメチジン
・スルピリド
・オメプラゾール
・塩酸ラニチジン

抗癌剤

・テガフール・ウラシル配合剤
・シクロホスファミド
・タモキシフェン
・フルタミド
・メトトレキサート
・6-メルカプトプリン

化学療法薬

・イソニアジド
・サラゾスルファピリジン
・塩酸テルビナフィン
・ニューキノロン系
・ピラジナミド
・フルコナゾール
・リファンピシン

抗菌薬

・セフェム系
・カルバペネム系
・ペニシリン系
・マクロライド系
・テトラサイクリン系

漢方薬

・小柴胡湯
・柴苓湯
・葛根湯

代謝性疾患用剤

・トログリタゾン
・アカルボース
・ボグリボース
・グリベンクラミド
・エパルレスタット

その他

・アザチオプリン
・ザフィルカスト
・経口避妊薬
・ジスルフィラム
・蛋白同化ステロイド
・パルミチン酸レチノール
・プロピルチオウラシル

服薬指導でのポイント

検査値のチェックができればいいですが、検査結果が不明な場合や確認が困難な場合もあります。

検査値でチェック

AST、ALTの変動に注目しましょう。服薬開始前の患者の基準がどれくらいかをチェックできていないと服薬開始後の検査結果と比較ができないので、開始前の値も重要です。

加えてプロトロンビン時間、血清アルブミン、コリンエステラーゼなど肝機能の悪化に影響する検査値も測定している場合は貴重な情報です。

肝障害の伴う症状の出現がないか確認

倦怠感、食欲低下、嘔気、黄疸などの症状が出ていないか確認しましょう。

くま先生
くま先生
お薬をはじめてから吐き気やだるさ、食欲が落ちたり肌や白目が黄色っぽくなったと感じたことはありませんか?のように口頭でも症状チェックができますね!