メトホルミンの基本情報をおさらい
作用・特徴
・インスリン抵抗性改善
・肝臓での糖新生抑制
・腸管からの糖の吸収阻害
・体重が増加しにくい
・単独では低血糖は起こしにくい
・薬価は安価
・ヨード造影剤に注意
→メトホルミンの腎排泄が低下するので乳酸アシドーシスが起きやすくなる。検査前~投与後48時間は休薬が必要。
・過度のアルコール摂取に注意
→肝臓での乳酸の代謝が低下するので乳酸アシドーシスがおきやすくなる。
どのように使われる?
処方されるほとんどは2型糖尿病で使われていると思います。保険適用外使用で不妊治療に用いられることもあるようです。
下痢や吐き気などの消化器系の副作用が出やすいので少しずつ増量していきます。
成人は500mgから少しずつ増やしていきます。最大は2250mg(250mg錠1日9錠まで)
副作用・注意点
副作用では「乳酸アシドーシス」が有名です。
腎機能低下やシックデイ・過度のアルコール摂取でリスクが高くなります。
くわしくは「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」を見てください。
ビグアナイド系薬剤
・メトグルコ錠
・グリコラン錠
・ジベトス錠
・ジベトンS腸溶錠
メトホルミンのエビデンスは??
UKPDS
・新たに診断された2型糖尿病患者を対象に,血糖コントロールによって合併症が抑制できるかを検討した英国の大規模疫臨床試験:UKPDS
① 2型糖尿病患者において,厳格な血糖コントロールは細小血管症の進展は軽減するが,大血管症については不明であり,低血糖・体重増加のリスクを伴う。(UKPDS33)
②肥満のある2型糖尿病患者において,metforminを使って厳格な血糖コントロールをめざした場合,SUなど他剤による厳格な血糖コントロールに比して,より合併症のリスクが減少した。また,metforminを使った群では体重増加が少なかった。(UKPDS34)
SPREAD-DIMCAD
冠動脈疾患(CAD)既往のある中国人2型糖尿病患者において,主要心血管イベントに対するmetforminとglipizideの長期有効性を比較した試験:SPREAD-DIMCAD
①3年間のメトホルミン治療vsグリピジド治療
→HbA1cや低血糖は有意差はなかった。メトホルミンのほうが心血管イベント・総死亡がほぼ半減した!
REACH REGISTRY
国際観察研究のREACH REGISTRY では、アテローム性動脈硬化を有する糖尿病患者にメトホルミンを投与すると、全死因死亡リスクが24%低下することが報告されています。
メトホルミンの鑑査・服薬指導のポイント
鑑査のポイント
開始から高用量でていないか?
開始用量→500mg/日 分2~3 食直前or食後
維持量→750mg~1500mg/日 分2~3 食直前or食後
最大2250mg(250mg9錠)
10歳以上小児
開始用量→500mg/日 分2~3 食直前or食後
維持量→500mg~1500mg 分2~3 食直前or食後
最大2000mg(250mg8錠)
禁忌や相互作用は必ずチェック
・1型糖尿病ではないか?
・腎機能の程度をチェック→検査値や腎臓病の既往歴がないか見ておきましょう。(eGFR30mL/min/1.73m²未満や透析患者で禁忌)
・乳酸アシドーシスの既往やBG系のSE歴がないか?
・栄養不良、手術前後、重度感染症など特殊な状態にないか?
・過度のアルコール摂取はしていないか?()
・心血管系の高度障害、肺機能の高度障害はないか?
・肝機能の程度をチェック→乳酸が肝代謝のため(筋肉でできた乳酸は肝臓に運ばれて乳酸→ピルビン酸→・・・→グルコース6リン酸→グルコースに戻る経路がありましたね!(コリ経路))
相互作用は?
腎機能の低下
・ヨード造影剤
・腎毒性の強い高製剤(ゲンタマイシン等)
腎機能の低下(腎のOAT阻害作用のある薬剤)
・シメチジン
・ドルテグラビル
・ビクテグラビル
・バンデタニブ
血糖降下作用↑
・糖尿病用薬
・タンパク同化ホルモン
・サリチル酸剤(アスピリン等)
・βブロッカー
・MAO阻害薬
血糖降下作用↓
・アドレナリン
・副腎皮質ホルモン
・甲状腺ホルモン
・卵胞ホルモン
・利尿剤
・ピラジナミド
・イソニアジド
・ニコチン酸
・フェノチアジン系
脱水に注意
・過度のアルコール摂取(禁忌)
・利尿剤
間違ったジェネリックに変えていないか?
①メトグルコ錠250mg→メトホルミン塩酸塩錠250mg「トーワ」
②メトグルコ錠250mg→メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「トーワ」
「MT」の意味について
違いはMTがついているかいないかで判別できますね。
グリコラン錠の後発品がMTのついていないもの。
メトグルコ錠の後発品がMTのついているもの。メトグルコのMTです。
添付文書を見て貰えばわかりますがMTのついていないものは1日最大用量が750mgまでとなっています。用法が違うのです。
これを超えると疑義の対象になるので違いは覚えておきましょう。
服薬指導のポイント
医師の説明で理解している部分は無理に詳しく伝えるより簡単におさらいして確認。理解できていない部分は情報を補って説明しましょう
メトホルミンの情報提供例
「糖尿病による合併症を予防する効果と健康寿命を延ばす効果が知られています。欧米でのガイドラインでは糖尿病の第一選択になっています。」
「作用はSU薬よりは弱いですが単剤で低血糖を起こすリスクは比較的低いです。体重の増加をきたしにくいことや薬価が安いこと(1錠10円程度)も特徴です。」
「このお薬は用量を増やすほどHbA1cを改善します。飲み始めや増量のタイミングで副作用が起きやすいので、大人でも最初は少量から段階的に量を増やしていくことがあります。
大人だと750~1500mgで維持することが多いです。」
副作用についての説明
「飲み始めや増量時に下痢が出現しても3日間ほどは増量した用量で服用し,それでも下痢が続くようなら元の用量に減量することも考えられるので医師に相談しましょう。多くの場合は服用を続けていると消失していきます。分からない場合はご自身の判断で中止するのではなく一度薬剤師か医師に確認してください。(消化器症状)」
「メトホルミンの副作用で乳酸アシドーシスというものがあります。血中の乳酸が多くなって血液が酸性になる状態です。症状としてはひどい下痢や嘔吐、体のだるさ、筋肉痛、呼吸が苦しいなどです。まれな副作用ですが予防と早期治療が重要です。(乳酸アシドーシス)」
「①ひどい下痢や嘔吐(脱水状態)
②食事が全くとれない状態
③腎臓や肝臓の機能が低下した状態
④アルコールのとりすぎ
⑤ヨード造影剤を使う検査や治療(尿路造影・CT・血管造影など)
このような場合には乳酸アシドーシスが起きやすくなるので服用するのをやめて医師や薬剤師に相談しましょう。(乳酸アシドーシスの予防)」
糖尿病とアルコールの関係はこちら
HbA1cや血糖値の確認
HbA1cは何のために確認していますか?
治療効果の確認として分かりやすいですが、追加や増量でも低下があまりよくない場合は服薬に問題があるケースがあります。会話の中でヒントをしっかり聞き逃さないようにしましょう。
「実はお昼は仕事で朝と夕しか飲んでないんですよね。」
「朝はご飯食べないから夕食の時だけ飲んでるんだよね。」
「昼頃におきるから3回も飲めないんですよ。」
「飲んだどうかわからなくてそういうときは飲まないようにしています。」
「副作用が心配だから数値いい時は減らしてるんです。」
などなど会話をしていると原因が見えてくることがあります。
薬剤師はこういう部分を改善するためにアプローチすることが重要ですね!